電気文化会館 ザ・コンサートホール 12月15日 18:00開場 18:45開演 
フルート:満丸 彬人(名古屋フィルハーモニー交響楽団) 
ピアノ:澤村 桜子 
■J.S.バッハ:ソナタ 変ホ長調 BWV1031 
■ウジェーヌ・ボザ:アグレスティード Op.44(1942) 
■シャルル=マリー・ヴィドール:組曲 Op.34(1877頃) 
休憩 
■ジークフリート・カーク=エラート:ソナタ 変ロ長調 Op.121() 
■フランク・マルタン:バラード(1939) 
■アレクサンドル・ローゼンブラット:カルメン・ファンタジー(1993) 
アンコール サン=サーンス:ロマンス Op.37 

 同日にTbの田中さん(名フィル首席)とマリンバ奏者の奥様とのコンサートがあったけど、無料につられてこっちにきてしまった。プログラムも現代的で魅力的だったし。先月岡崎にエマニュエル・パユを見に行きフルート熱もあったし。トロンボーン好きとしてあるまじき行為だけど許して…。田中夫妻は2年に1度やってるみたいなので(ラジオより)再来年はまだ私が生きてたら行きたい。
こんなかわいらしいサイトがあったなんて。

 さて満丸さんといえば入団したらちょうどコロナでなかなか舞台に立てなかったっていうテレビを見た。(地上波の転載は良くないけど…https://www.youtube.com/watch?v=AO4_c_g2-cQ&t=34s)今回のコンサートも名古屋に来て初のリサイタルだったらしい。

 電気文化会館、五分前のチャイムがおどろおどろしい。

前半 
 バッハはテンポは遅くなくさっくりな感じ。最初ピアノが転んでておっと思ったけどこの曲だけであとは心配無用だった。ビブラートは速めの控えめ。
 アグレスティードの高音が綺麗。デクレッシェンドのリリースで音が鳴らなくなったように感じたり、逆にすごく綺麗に出ていたりするところがあるんだけどあれはわざとなのだろうか。ミスだと仮定して癖を探したのだが、目線が上の時の方が最後まで綺麗に音が出てる気がする。下向きの時は息の成分が増えて音に成っている部分が少ないように感じた。まあ、ただ単に音高が高い時に上を向いていただけかも。
 ヴィドールは曲自体が難しく感じたのだが、年代は古めだし今聞くとそんなことはないはずなんだけど。アグレスティードの現代性に慣れてつまらなく感じた可能性は十分にある。
後半
 休憩終わりにトークあり。
今回のコンサートはムラマツフルートのおかげで開催できた。ちょうど自分が名フィルに入った時にコロナが流行り出し、なかなか人前で演奏できなかったが今日沢山の人に来ていただいて感謝している。自分はムラマツのDSシリーズを中高生のころ使っていたが大学受験時に先生にSRシリーズを借り、今はゴールド管シルバーキィのSRを使っている。DSとSRでキーシステムが違いDSのほうは滑らかに演奏できるのが利点。現在の楽器はゴールドのパワーとシルバーの煌びやかさ(?)を兼ね備えていて良い。
本日のプログラムはフルート奏者にとってもマニアックだが、来年3月に挑戦する神戸国際コンクールの課題曲が構成されており2次試験にボザ/アグレスティード、3次試験にカルク=エラート/ソナタ、本選にマルタン/バラードが使われる。最後のローゼンブラットは本来ClorVnとピアノ用だがヴァイオリン版を自ら編曲した。
なかなか世の中の状況がよくなりそうにないがコンサートで少しでも来て良かったなと思ってもらえたら嬉しい。
 とのこと。

 カーク=エラートも高音がきれい。オクターブの跳躍や細かいパッセージも難なくクリアして簡単な曲に聴こえるくらい。ピアノもダイナミックで良かったと思う。ただ高音と低音の音量差が激しいのはフルートだから難しんだろうけど、低音の豊かさはもっと欲しい。上のオクターブの音が重なって聞こえたりは時々あった。

 マルタンのバラードが今回の演奏会で一番良く感じた。曲自体も好きだったかも。何より最後の音域高めの速い所が満丸さんに合ってる。ていうか全体的に使用音域が高い?タンギングでの曲想のブレなさとか、テンポを上げて盛り上がっていくところで技術的不足を感じさせない所とか、カデンツァの緊張感を演出するテヌートの度合いとか、ピアノに包まれて協奏してる感じとか良かった。

 カルメンはyoutubeで録音を聞いてみてなんだかジャズっぽいのはわかるけどカルメンぽさはよくわからないなーとぼんやり思ってたんだけど、満丸さんはカルメンの有名フレーズを複雑な中間部の後に丁寧に吹いたり、音量的にも大きく(ハッキリ吹くことでそう聞こえただけかも)してくれたりで分かりやすく楽しむことができた。ピアノももっと複雑な気がしてたんだけど和音の構成音の強弱のおかげか?意外とあっさり馴染めた。まあピアノは録音だと拾いすぎることもあるよね。兎に角、面白い曲だと思えた、これは嬉しい。私もヴァイオリン版さらってみようかな。一番最後は本来高音でキメる予定だったのかな。強い息で吹いた後長音で締めて伴奏者と笑いあっていたので。

 翌日にサンサーンス没後100年、かつ、今日は大変な曲ばかりで体力的にもきついのでゆっくりで綺麗な曲を最後に、ということでサンサーンスのフルートのためのロマンス。来てよかった。

 弱奏時に何かキュルキュル音がする。フルート吹いたことないのでわからないけど何の音だろう。実はこれハンス・ロットの時書き忘れてたけど、2楽章で、特に客の少ない金曜日に聞こえてたんだよね。ロットの時はどこから聞こえてるかわからなくて(2階下手側位だとは思ってた)ローマの噴水みたいな鳥の鳴き声とかあったっけとか考えてた。今日気が付いたけどあれはフルートの音だったんだな。多分。

 使っていた譜面台がRAT standだった。格好良い。

パユとの比較
先月エマニュエル・パユ&バンジャマン・アラールを見てしまったばかりに奏者には大変申し訳ないが比較せずにはいられない。どちらが優れているというわけではない。特に表現については。
バッハの伴奏はアラールはかなり安定していた。これはチェンバロだから粒立ちが良いってのが大半だとは思うが。アゴーギグは普段はかなり控えめだが強弱の変わり目にしっかり。記憶違いな気がしてきた。かなりテンポが遅かったのは間違いない。一音一音しっかり吹いてる感じだった。
・音量がパユはすごく大きかった。音高による差も少なくて、低域の豊かさ、音が太くしっかり飛んでくる感じがすごい。やはり満丸さんは技術はすごいので音色の、特に低域のさらなる改善があれば更に最高なのだ。
・パユは楽器を客席とフォルテでは垂直、ピアノでは45度位にしていたが今日は平行で楽器はほぼずっと壁を向いている。パユの時に生音なんだ!と吃驚した。今日のが寧ろオーソドックスなんだよね多分。
・音の移り変わり、特にテヌートなんかはわかりやすいが、変わり目までしっかり音が詰まってた。これも音色に関係するか…。
・やはり音の処理、消えそうになるリリースは差が出る。パユはビブラートをあえてしっかりかけてそれでもティミヌエンドを最後まで美しくビブラート幅は一定でマジすごかった。

技術を生かす曲の構成や高音の澄んでる感じがすごいコンサートでした。コンクール応援してます!

以上