日記


タイトルロールのクレオパトラの熱演や個々の見せ場はあったものの全体的に地味に感じた。特に最後はアラジンの序曲が回帰しつつクレオパトラの最後の独りでの演技だったが、周りの演出があまり手伝えていないように感じた。背景と床は青緑で、建造物の階段の直線的な造形も相まって、良く言えばモダン、悪く言えば地味な感じ。一番最後の影のアイデア自体はいいのだと思うけど、そこに至るまでの盛り上がりが欠けていて、強弱の差が薄いかなと思った。クレオパトラの最期は命の最期なのか女としての最期なのか…わからなかった。

音楽は基本的にはカール・ニールセン作曲の劇付随音楽『アラジン』が使用されている。そして所々合間にニールセンの曲が入る。筆者が気付いたのは交響曲第1,2,3,4,5番、木5第3楽章フルートの軽やかなところと主題。主題は弦楽アレンジだが一部しか演奏されなかった。そして弦楽合奏曲とヘリオス序曲フーガ部。
第二幕の中間部は知らない曲もあった。流石に全てを一瞬で名前当てれるほどに把握しているわけではないのでね。

第二幕の後半、演出だけではなく音楽の選択もちょっと締まりに欠けるかなと思った。似たような曲が続いて面白くなかった。あと、悲劇なのかオリエントを出したいのかハッキリわからない。ニールセンの暗い楽曲って少なくて、それこそ交響曲第5番の第2楽章アレグロ前とかアラジンのごく一部しかないと思う。その選択肢の少なさに苦労したのでは。
室内楽作品は古典を目指す本作にはアヴァンギャルドな響きすぎるだろうし。葬送的なアンダンテ・ラメントーソは沁み沁みしすぎだし。

踊り
第一幕はエロさを前面に出す。脚を出したクレオパトラが、身体を重ねるダンスを数々の男たちと繰り返す。男たちはダイナミック五体投地で求愛する(?)。
赤いマントのオクタヴィアヌスとその配下のダンスが、ガタイの良い男らしく迫力があって良かった。
一番面白かった振り付けはクレオパトラの?第1幕の割りと初めの方にあった回転しながら腕を手のひらを上にしながら上げるやつ。

第二幕は子供と一緒に登場。幸せも束の間ドラマが動き出す〜。なーんか地味なんだよね。上記の演出もあるけど第二幕は冗長に感じて、、。お決まりの個人の演舞の披露会などもダイナミックではなかったし。自分が求めていた方向性が良くなかったのもあるかもしれないけども。有料プログラムを買って、あらすじをきちんと読み込むべきだったか。
やはり男性の振り付けはダイナミックで見ごたえがあったけど、女性の振りがあんまりだった。

ニールセンの曲をあまり知らない人たちはどのように思ったか筆者には想像できないことに気がついた。筆者は曲が挿入されるたびにアレだなと思ったけど、知らない人は一貫性のある劇音楽にちゃんと聞こえたのだろうか。

弦は8人位からでコンバスは5人。人数少なくVnの音は小さすぎる。チューバはすごい頑張って吹いてた。ニールセンてチューバ活躍するよね。まあ交響楽団と比べると実力は…比べるまでもないですが。特に静かなところで差が出る。

前日までのオンラインではA席しか残ってなかったけど当日はSABまで多少出た模様。どうせ行くなら熊さんが出るときが良かったけど日程の都合で今日行った。総合的に満足行かない所も多いがクレオパトラの演技は見事だったし、ニールセンマニアとしては行っといてよかったと思う。

概要

2022/10/27 kバレエ クレオパトラ
Bunkamuraオーチャードホール
13:15 14:00
クレオパトラ:浅川紫織
アントニウス:栗山 廉
オクタヴィアヌス:石橋奨也
オクタヴィア:成田紗弥
プトレマイオス:吉田周平
ブルータス:杉野 慧
ガイド:栗原 柊
ポンペイウス:ニコライ ヴィユウジャーニン
ジュリアス・シーザー:遅沢佑介
S席15,000円
A席11,000円
B席8,000円
C席6,000円
A親子席:15,000円(※注1)
学生券:3,500円

みどころ

名だたる古典バレエを自身のプロダクションとして生まれ変わらせてきた熊川哲也が、原作も音楽も存在しない全幕作品に挑んだのは2017年のこと。絶世の美女の代名詞でありながら、いまだ多くの謎に包まれているクレオパトラ。熊川は壮大な史実を紐解きオリジナルのストーリーを構築、全2幕にわたるグランド・バレエに仕立てあげた。

作品の成功を大きく左右する音楽に熊川が選んだのは、知る人ぞ知るデンマークの大作曲家カール・ニールセン。舞台美術デザインには、メトロポリタン歌劇場やミラノ・スカラ座など世界の一流オペラ劇場の舞台を手がけるダニエル・オストリングを起用。ゴールドとエメラルドブルーを基調とした斬新な造形美と空間使いは、現代的感性が光る前田文子の衣裳と相まって観客をいにしえの世界にいざなう。そして、クラシック・バレエの既成概念を大胆な創意で押し広げた振付。すべてが完璧なる融合を果たした、振付家・熊川哲也の最高傑作がこの「クレオパトラ」なのだ。

今回、圧倒的な技術と存在感、クラシックの枠を超えた表現を必要とされるタイトルロールを演じるのは日髙世菜、飯島望未、浅川紫織の3人。熊川に「完璧なバレリーナ」と言わしめた日髙世菜。可憐な容姿に反して野性的な動きを得意とし、今年3月に「プリンシパル」に昇格した飯島望未。そして、初演時のキャストである浅川紫織は怪我からの完全復活を遂げる。クレオパトラ第二世代となる日髙と飯島、初演時の名演を蘇らせる浅川の競演が作品に新たな息吹を吹き込む。

さらに今回、ジュリアス・シーザー役に熊川哲也の出演が決定した。ギリシャ・ローマの歴史を決定的に変えた政治家であり軍人という役所のシーザーは、クレオパトラの激動の人生を司るキーパーソン。圧巻の存在感を必要とされる役だけに、期待は尽きない。

最高の布陣でお贈りする熊川哲也の最高傑作、4年ぶりの再演をぜひお見逃しなく!



ストーリー

紀元前1世紀、エジプトの首都アレクサンドリア。絶世の美女と誉れ高いクレオパトラは、父王プトレマイオス12世亡き後、200年以上にわたるこの王朝の慣例に則り、弟のプトレマイオス13世と結婚、共同で王位に就いていた。とはいえプトレマイオスはまだ少年。事実上、実権を握っているのはクレオパトラだ。王としての教育を受けながらも子供気分が抜けないプトレマイオスに、後見人である廷臣たちは自覚を芽生えさせる。そして姉の政治介入を嫌う弟とその一派は、クレオパトラを排除しようとしていた。
そんな折、共和制のローマで三頭政治を形成していたジュリアス・シーザーとポンペイウスの間に戦争が起こる。シーザーに敗れてエジプトに逃げ込んできたポンペイウスをクレオパトラは介抱する。男たちの心を虜にしてやまない彼女の美しさにポンペイウスもまた魅了される。だが、弟一派はポンペイウスを暗殺。そして自分をも殺害しようとする弟たちからクレオパトラは逃れる。
王位を奪われたクレオパトラだが、自らの魔性の美貌が男たちの心を捕らえるだけでなく、政治の武器とさえなることを、彼女は誰よりも知っていた。ポンペイウスを追ってアレクサンドリアにやって来たシーザーに、クレオパトラは王位奪還の協力を得るため直訴しようと画策する。弟たちに悟られずシーザーに会うため、クレオパトラはその身を絨毯にくるみ、貢物を献上するという口実で彼の前に姿を現す。聡明で美しく、目的のためには危険も厭わないクレオパトラに、シーザーは瞬く間に心奪われる。クレオパトラは王位を再び手中に収め、シーザーへの反撃に出た弟プトレマイオスは命を落とす。
シーザーがローマの最高権力者となり、彼との間に子をもうけたクレオパトラは、エジプトのファラオとしてのみならず、我が子がやがてローマを治める野望をも抱き、まさに絶頂期を迎える。だが、幸せは長くは続かなかった。腹心ブルータスらによるシーザーの暗殺、シーザー亡き後のローマで実権を握ることとなったアントニウスとの恋、我こそはシーザーの正統後継者であると主張するオクタヴィアヌスとの決戦…。
そして激動の人生を生き抜いたクレオパトラに、最期の時が訪れる――。