概要

2022/12/14 (水) 開場17:45 開演18:45 
愛知芸術劇場コンサートホール
ACO20周年特別企画Part3~東混シリーズ第2回
「”最も華麗なレクイエム”が鳴り響く」

曲目
■ジュゼッペ・ヴェルディ (1813-1901):
 レクイエム(「マンゾーニの命日を記念するためのレクイエム」)(1873/74?)

指揮:山下一史
合唱:東京混声合唱団
ソプラノ:森谷真理
メゾソプラノ:池田香織(中島郁子の体調不良による。本番の2日前に発表)
テノール:福井敬
バリトン:黒田博
管弦楽:愛知室内オーケストラ

日記


演奏

 とにかく合唱が上手だった。特に冒頭のRequiem æternamで無伴奏合唱の厚みに感動した(後述①)。先日同じくACOで聴いたラトヴィア放送合唱団は、正しい音程と、あまりにも揃いすぎた(ズレが分かりにくい)アタックとノンヴィブラートで別次元の綺麗さだったが、東混はそれとは別のすごみがあった。昨年のACO&東混の第九は人数が今日の半分以下で、更に黒子のようなマスクを着用していて、発声でマスクの下側が浮き上がる大変気の毒な様子だったが、今日はそのコロナのイメージを払拭するパワーがあって良かった。ただ私はこの隙間を開ける配置は音が広がりすぎている感じが苦手で、合唱は密集配置の方が好きだ。密な合唱隊は2019年12月の名フィル第九以来聴いていない。今は仕方ないけど悲しい。

 しかし合唱隊がオルガン前に行くことはソリストにとっては良いと思う。今日のソリストの位置は舞台後方の壁の前だが、芸文ではここが一番声が飛んでくると私は思う。何度か舞台前方で歌うのも他の公演で聞いたが、壁の後方支援が得られなくて客席に無慈悲に吸収・拡散され、上まで声が飛んでこなかった。

 弦楽器は人数が少ないこともあり所々音程のズレが目立ったが、合唱が覆いかぶさってくれるので全体では特に問題に感じなかった。Offœrtoriumn冒頭のチェロの高音は一応許容範囲内というか想定範囲内というか。ハイポジなので仕方ない。弦の、特にCbの人数が少ないのはすこし迫力の面で不利だったかなと思う。

 演奏はいつもの山下氏とは一味違う揃いっぷり。しっかり統制が取れていて気持ちが良い。ただフーガの開始部分では合唱が大きくずれそうな気配があったように見えた(気のせい?)。とはいえ崩壊せずやり遂げた。これは合唱隊が左右に広がっていることが難易度upの原因になっていそう。テンポ設定がゆっくり目になっている所があって面白かったのだがどこかは忘れてしまった。

 ソリストも大変豪華で上手で満足。森谷氏のpppは綺麗な細かいビブラートでオケ中からよく聞こえてくる(Offœrtoriumnの終わり)。メゾの池田氏は常に太い声で包容力があった。響きの量がすごい。黒田氏は最初の見せ場(?)で、ビブラートの音程幅ちょっと広げすぎじゃないかと焦った。わざとかなぁ。でもとてもおもしろかった。池田氏以外は、来年3月のびわ湖マイスタージンガーで再びお目にかかれる予定。特に黒田氏はベックメーサー役で大活躍のはず。期待が高まる。池田氏は今年の大晦日のベートーヴェン交響曲全曲演奏会に出演なさるそう。

 途中でチューニング一回アリ。

以下メモ
  • ピッコロは控えめに聴こえたが合唱に吸われていただけかも。でも私は控えめのほうが好みなので良かった。
  • 初(?)チンバッソだけどソロですごい活躍するわけでもないからあまり音がよくわからなかった。音色はほとんどTrbと一緒で聞き分けは高難易度だったか(後述②)。どなたかチンバッソリサイタルの開催お願いします、前半はピアノ伴奏付きのオケスタで。チューバにはステレオの外を埋める力があるんだなと思った。
  • 大太鼓は両手持ちで叩いていた
  • バンダのTrpの低域は、はっきりとした音にするのはなかなか大変そうだった。作曲当時はF管の長管のバルブ付きがよく用いられていたという噂を聞いたことがあるけど……。楽譜を見るとEsかCかDの移調譜になっているけど……よくわからない。Es管がナチュラルならTuba Mirumの短3度の和音はゲシュトップでもしないと不可能だろうし、やはり長いEs管のバルブ付きと考えるのが自然?そういえばハイドンのTrp協がEs-durだな、などと思ったりした。(後で調べる)


 ここは帰宅後スコアを眺めて、終止にバスとテナー間の5度を用いないんだなと思った。それから(それゆえ?)SpとBaßの間隔も狭い気がする。まあ開離配置の音ではないよなと思った。なぜこんなことを気にしているのかというと、この演奏会直前に寄ったアートライブラリーで、四声合唱の書き方の本に基本的には開離配置が望ましいと書いてあったのを偶然見たから。

 チンバッソの音について。例外的に、怒りの日のBメロ的な部分の1拍目はよく聞こえたが、私にはここが、どうも間の悪い「ブッ」やら「ボヘ」やらに聞こえて可笑しかった。オクターブの跳躍本当に必要?合唱のバスと同じように伸ばせばいいのではないかと思ってしまった。
 ついでに怒りの日の大太鼓について。もしヴェルディがまだ生きていたら、Twitterのリプで左右に2台配置しない?と提案する。それから1回目はバスドラが叩かれない理由も気になる。

〇 Cbのピチカートにバスドラが重ねられている所があったが親和度が低かった。これはバスドラの音が固いせいだと思う。音が柔らかい合わせる用のバスドラを用意するか、現代ならCbの代わりにティンパニを用いた方が良いのでは。

〇 オケの音圧の殆どは、Trpの密集配置により作り出されていると思った

〇 反省点。曲の中間部は進行を感じられなくて眠くなってしまった。Sanctusの後しばらく静かな部分が続き終わりが見えなくなった。Sanctusの終わり方はオペラのアリアをそのまま急に持ってきた感じだし、Agnus Deiへの落差にもついていけない。Sanctusの終わり方は拍手がないとむしろ不自然。拍手→指揮者会釈→調律、位の間が欲しい気分になった。その後のLux æternaは永遠の光を祈る歌詞なので厳かなのはわかるが、音楽が停滞しているように感じてしまう。これは予習次第でどうこうなる話ではないと思う。けれどもう名古屋でプロの合唱団でヴェルレクが聴けることなんてそうそう無いだろうし未消化部分があるのは悔しい。ということで、来年に向けてフォーレのレクイエムの予習を怠らないようにしていかなければなるまいて。

雑記

 急に寒くなった。伏見から栄の間では洋楽のクリスマスソングが流れていた。5,6年前はフランクのVnソナタ風の曲が永遠と流れていたのに無くなってしまった残念。あれはあれで第3楽章冒頭の動機を永遠と繰り返していたので奇妙だったが。
今年の残りの予定
15木 芸文:アンサンブルウィーンベルリン 10:00~名古屋国際音楽祭&N響名古屋公演
16金 芸文:名フィル第九 10:00~都響名古屋公演チケ取り
17土 名古屋音大邦楽演奏会
18日 電気文化会館:椙山女学園卒業生&教師演奏会
22木 しらかわ:ACO定演
25日 豊田市CH:BCJメサイヤ、ゲルハルト・リヒター展

今日の演奏を聴いて、3月4日の東混名古屋公演に行きたくなったが、その日は豊田市のレヴァンフランセを既に購入済みだった。残念。

おもしろ動画


以上