■チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
■チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」より第2幕
ヴァイオリン:成田 達輝
指揮:円光寺 雅彦
東海市芸術劇場大ホール 18:15開場 19:00開演
S席3000円 A席2000円 A席(小中高生)1000円

 リーズナブルな値段でわざわざ大阪から来てくれるなんて文化庁やるやん行くしかない。ってことで行ってきた。ソリストは新進気鋭の成田達輝さん。若手ヴァイオリニストの中で筆者は特に注目している。9月20日のACO弦楽合奏以来。11月に奥様と三重文化会館宗次ホールにも来ていたけどお財布の都合上断念。

突然だがカプリースはTwoSetViolinやレイチェンのおかげでyoutubeでは5番や21番ばかり注目されているが、個人的には7番を推しておく。技術的にも音楽的にもよい曲だと思う。

Tchaikovsky : Violin Concerto in D major, Op. 35 (1878)


 オケの一般団員入場から拍手をするのが名古屋流。例に漏れず今日も拍手をするが、する人が少ない上に途中で止まったw この団員入場の拍手、実は今でも違和感(というより気恥ずかしさ)がある。不思議な風習だなぁと。名古屋でも拍手してる人は全員ではなく8割位だ。しかし、いざ無くなると寂しいもの。あったほうが雰囲気が和やかで良い。これからは微妙な顔をせず堂々としよう。(ただし名古屋の4プロオケに限る。)後半のくるみ割り人形では最初から拍手無し。学習しました。

 いつも思っているのだが、舞台上で練習している団員がわざわざ捌けずにそのまま開演時間までいて、他の団員も少しずつ集まってきて、開演時間に丁度揃っているようにすれば良いのにな。舞台上が狭く楽器がぶつかるから駄目なのか。気が付いた。

 達輝氏は登場から笑顔で、次いでトップの2人に肘タッチ。謙虚なのか後ろのほうで礼。音は程よいザラザラ感で、デカい音というわけでは無いが十分に届いてきてオケに負けない存在感がある。そして何より音が明るい。調弦を高めにしているという感じではなさそうだが、高く聞こえる。

 1楽章は自由に歌いながらも意外とコンパクトな演奏だった。大人が酔いすぎているのではなく、子供が上手に踊っているような感じ。演奏自体は勿論大人だが、遊び心を忘れないと言ったら良いだろうか。弓を飛ばす所は思いっきり飛ばして表情を付ける。1か所だけバロックよろしく装飾音符を足していた。詳細な場所は忘れてしまったが、独自の解釈があるのだろう。Twitterで3楽章について呟いていたのは知っていたが、1楽章にギミックを入れ込むとは驚いた。まあ、手癖で即興でそうしただけかもしれないし、聞き間違えかもしれないが。

 1楽章練習番号Eから(トリルの所)[poco] piu mossoの速度変化だが、筆者はあまり大きく変化させるのは好みではない。今回は程よい感じでしっかりこの前後のつながりを感じてよかったと思う。

 2楽章はトリルが上手でつつがなく進行し、期待していた3楽章は意外と大人しめに感じた。弓はすごく飛ばす。1楽章だと一瞬で過ぎるためギミック的に楽しめるが3楽章だとやりすぎ感も。1楽章の伏線回収的な意味も込められていたのかもしれない。ただ飛ばしの状態が長く続くので、曲の終わりでは飽きてしまった。テンポは遅くは感じなかったので、上のツイートの解釈がなければどれだけ早かったのかも少し気になる。

 アンコールは、「バッハとパガニーニどちらが良いですか」と聞き、拍手の大きさで決めた。パガニーニの方が大きかったのだが、「明らかにバッハのほうが大きかったので」ということで、"パガニーニ"の演奏。続いて拍手の最中に連続してバッハ。サービス旺盛!バッハは弾きながら退場で最後まで楽しませる。
 今日の演奏はエンターテイメント性に富んでいてとても楽しめた。今度はシリアスな曲を是非聞いてみたい。成田氏のツイートを見ていると決して明るいだけではない雰囲気を感じるのだ。暗く激しい一面も演奏上で見たい。

 オケについて。全体的に個々人の主張が結構強い。オケ全体のまとまりを至上命題としているような(?)名フィルに慣れているせいか、ホールが小ぶりなせいかそう感じた。特に木管の主張があり、具体的には89小節目と266小節目のフルート上行形はかなり煩く聞こえた。クラリネットも全体的に強めだった。

チャイコン3楽章の動機は怒りの日説

いわれてみればハレルヤだ…… 🤔と思ってしばらくぼんやり考えていたのだが、ちょっと閃いたことがあるので発表する。

 筆者は、全体にまたがる動機はグレゴリオ聖歌の怒りの日ではないかと思う。例えば3楽章冒頭のTempo1、第1主題と呼べそうな所(若干省くと音列は)、レ#ドレシ#ドラ……はほぼほぼ怒りの日っぽい。そして上記ツイートの箇所(練習番号L)、レドレラシレラ、は怒りの日の変形でもあり、ハレルヤにもなっていると考える。ハレルヤになっているのが無意識か意識して作曲したかは不明。意識してても何もおかしくないが。ハレルヤだとすると、怒りの日からハレルヤへの変形がチャイコフスキーがこの曲でやりたかったことなのではないだろうか。

 あとは連想ゲームで、同じく怒りの日の動機が色々用いられるベルリオーズの幻想交響曲も参考にしたのかな、とか、怒りの日の動機がこねくり回され、暗からアルカデルトのアヴェ・マリアよろしく長調っぽくなるサンサーンス交響曲第3番(1886)ともアイデアが似てるなとか妄想が膨らむ。チャイコンは初演(1881)は不評だったらしいのでサンサーンスが参考にしている可能性は低いだろうか。

 リズムはロシアの踊り、後半のくるみ割り人形にも出てくるトレパックと全く同じ。ロシアの伝統と聖歌が融合した結果がチャイコン3楽章なのかなと妄想しいてる。

くるみわり人形

 前半もそうだったが、コンマスは胸に手を当ててお辞儀。前述のとおり拍手はコンマス登場から。
 前半感じた木管の主張が良い方向へ少し転じて、ソロもそれぞれ濃く満足。円光寺氏のチェロの弓風の指揮が見てて面白い。低音で足元がすごく揺れる。Trbはしっかり出ていたが、ここも個人の主張があり、ハーモニー担当としてのオケへの馴染みの良さで名フィルセクションの良さを再認識した。オケ全体についても弱奏時は上述の通りだが、強奏時は足並みがそろって壮大に響く。

 予習不足のため曲の終わりがわからず少し混乱した。バレエの曲って毎回毎回こんなに終結感があるものなのかと。

 アンコールは、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲の第2楽章から。コンバスが入っていたか忘れてしまった……。誰が編曲したのか、はたまた原曲のまま人数を増やしただけなのか気になる。

以上