▊ モーツァルト:交響曲第31番ニ長調 K.297(300a)『パリ』
▊ ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
休憩
▊ チャイコフスキー:交響曲第1番ト短調 作品13『冬の日の幻想』
愛知県芸術劇場コンサートホール 17:45開場 18:45開演

小泉和裕(指揮/名フィル音楽監督)
小林海都(ピアノ)
※新型コロナウイルスの影響により、アンドレイ・コロベイニコフから変更
名古屋フィルハーモニー交響楽団
第497回定期演奏会〈小泉和裕のチャイコフスキー〉

・マイクあり
・カメラマンあり(写真のみの模様)



モーツァルト31番

 良かった。名フィルx小泉監督ここに極まれりって感じだった。ビシっとそろった渋い響きのする弦が特徴的。先日聞いたセントラル愛知の優しい響きの弦と対照的。小泉監督のお堅い指揮も相まってこれがドイツ音楽ということなのかといった感じ。パリ、ではない。余計なあだ名が邪魔。

パガ狂

 良かった。先のモーツァルトがビシーっと揃っていたので最初の木管の受け渡しは余計にガタガタ不揃いに聞こえたが、ソロのピアノはそれに動じず堂々としており貫禄がある。怒りの日は透明感ある音でよく通る。有名な第18変奏は酔いすぎず、最初の主題の威厳を保ったままオケに綺麗に乗っかっていた。

 なんとなく音が丸い気がする。鋭いアタックがないような?音の個性として良い点としてみると、これはむしろ音が均質的に揃っているともとれる。

チャイコフスキー1番

 良いのだが……。オケはすごい上手だし、縦は揃っているが。しかし熱量が指揮で抑制されすぎてしまい最後の一線、感動までの一線を越えるまでには至らない……。オケと共に筆者まで現実に引き戻されてしまった。

 4楽章展開部の入り(フーガっぽい所)で一瞬オケが膨らんだ気がしたが、すかさず一瞬のうちに統率が回復した。ただそれが抑制する方向に聞こえてしまい冷めてしまった。もっと大きくテンポを上げオケの熱量を引き出す方向でまとめ上げてくれれば良かったのだが。そこからはオケを縛り上げるように4楽章終わりのAllegro vivoやpiu animatoもあくまで落ち着いた統率下の中で繰り広げられた。

 今回の実演を聞いて感じたことだが、4楽章コーダのpiu animatoは結構速度を上げないと効果が薄いと思う。直前まではTrp・Piccoloを主旋律に木管金管弦が鳴りっぱなしでかなり圧を感じる。しかしpiu animatoからは2分音符の音形がアクセント気味になり空間が空く。(金管が開離配置(寧ろオクターブ配置?)になったことで音圧が薄れたことも大きいと思う。オーケストレーションにもハテナが浮かんだ。)これによりAllegro vivoで積み上げた勢いが早々と解放されてしまう。もう一歩我慢して最大級の高揚感を得たまま終結を迎えるには速度を上げて集中を切らさないようにする必要があるように思った。

 途中Trbの2nd→1stの受け渡しがあって面白かった。多分上の動画の34:03から。楽譜上だと3rd→1stになっているので違う箇所か、奏者の判断でパート変更をしたか。面白かったが、スライド操作に伴う音と音の間が結構入っていて好みではなかった。とはいえテンポが上がっていく4楽章にポルタメントが付いてしまうのは良くない気がする。

 ベートーヴェンの第九のレチタティーヴォを参考にしてそうなチェロとコントラバスのユニゾンが登場するが、チェロの音程がいまいちだった。誰か調弦が狂ってしまっていた気がする。

 去年のブラームス1番やフランクの交響曲に対しても同じような、演奏が平たすぎるという感想を持った。楽譜通りに演奏する小泉監督の理念が映える時もある。ベートーヴェンやモーツァルト等。しかし……。

 小泉氏は師匠のカラヤンと比較されるが、カラヤンはベンツSクラスに対し小泉監督はセンチュリー、金閣寺と銀閣寺のように全く方向性が違うと筆者は思っている。(カラヤンの生演奏は聞いたことがないのであくまで録音から受けた印象だが。)地元の音楽監督にケチつけても仕方がないので、小泉監督の理念に沿おうと、理解しようとしているが、またしても今回も物足りなさを感じてしまった。チャイコフスキーの背景に松と障子が見えても合わない。(カラヤンが好きということでは無いです決して)

 恒例の観客の態度だが、顎を頻繁に触る癖がありマスクとこすれてザラザラ音を出す人や、不謹慎にも静かな所でカバンからバラバラパンフレットを取り出して音を立ててめくってしまう人なども近くにいたのが残念。あと、前の人が結構動いていたのがな……。(今回は非常に気になったというわけではないが書かずにはいられない。鬱憤発散のため許してつかぁせぇ。)

 昨年のリサイタル以来なんとなく注目しているピッコロが上手だ。変に浮いていたり音程が音程らしくなく祭囃子のように聞こえる奏者もいるが、その正反対を行っている。(それがピッコロらしいといえばそうなのかも?いやない)綺麗にオケに乗っかって丁度よく混ざっていてとても良い。去年のMVPはTuの林さんだという感想tweetを見た。それは賛成。では今年は筆者は今のところピッコロの満丸さんに一票という感じ。そういえばTubaは珍しく?C管だった。

その他

公式&感想ツイートまとめてみた。
東京公演も概ね成功したみたいで地元民としては嬉しい。

色々ツイートを見ていて気になったことがある。サントリーホールのほうがよく響くという書き込みだ。それぞれの設計事務所の測定結果では、空席時は明らかに愛知芸文コンサートホールの方が残響は長く、(特に人間がよく聞こえる2k~3kHzにおいて。)満席時はほぼ同程度なはずだ。実際に弾いている人には違って聞こえるのだろうか。残響を除いて考えても、あの芸文の初期反射を上回るホールはそうないと思うのだが。筆者はサントリーホールに行ったことがないので俄然に気になってきた。行く機会があれば反響にもよく注目したい。外来オケは何処か行きたいが……。ボストン響気になる。いや京都くるしそっちで良くない?

愛知芸術劇場の音響 A&T建築研究所 音響工学研究所
永田音響設計 サントリーホール

芸文大ホール、音場支援システムというのがついていて、残響音を足したりできるらしい。スゲー、ってMCSで似たような内容の記事を読んだよ

最後に、、チャイコフスキー1番第1楽章のフルートの装飾音形、アッテルベリが好きそうな気がする。

以上