感想

ナゴヤ・ファゴット協奏曲
 第1楽章 Fgの装飾音にクラリネットが絡まっていくところがよかった。Clで次第に隙間が埋まってきて、展開感があるのが面白い。その間TrbとTrpのコラールがあったが、これは映画音楽のような俗っぽい和声で面白くなかった。また、前述したFgとClによる複雑なポリリズム風からのこの映画音楽風のコラールの繋ぎは解放感が感じられず、必然さも感じられず、接続も釈然とせずいまいちであった。

 第2楽章。どこかで聞いたことのあるモチーフが繰り返される。数回目でこれはショスタコ7番の「戦争の主題」からの引用であると気が付いた(※)。曲目解説に第2楽章は「ウクライナ信仰を受けて追加した」とあったので同じく戦争を扱ったタコ7からの引用で間違いないだろう。そのタコ7がtuttiでしばらく続いたあと、特徴的なコラールがあったが、これは何が元になっているのかわからなかった。このコラールの上に、戦争の主題が乗っていて(変形されて?)楽章全体の統一感がありよかった。

 第3楽章。第2楽章とうって変わってどんちゃん騒ぎ。様々な楽想が登場する。曲目解説によると、嫁とどんなフレーズを入れようかと話して決めたとのこと。筆者が発見できたのは、「ラプソディインブルー」「ストラヴィンスキー「火の鳥」「春の祭典」」。あとはプロコフィエフのロミジュリっぽいところもあったがこれはストラヴィンスキーにも似たところがあるので選択肢から排除した(※)。筆者はこのような引用を見つけるのが好きなのでとても楽しかった。

 ※ どうしても、引用の推測が合っているか気になったので、作曲者のフェリックス・デルヴォーにFacebookのメッセージで問い合わせてしまった。そしたら「合ってる。1回聞いただけで分かったのすごいね」と返信が来た。うれしい。日本人相手だと絶対聞けないけど、外国人だとお互い英語ネイティヴではないのでハードルを低く感じて聞けてしまう。2023年のソフィー・デルヴォーのACO公演では、ナゴヤ・ファゴット協奏曲第2番を期待していたが無かった。何故ないのかは聞いていない。


フィガロの結婚
 上の楽譜の5小節目がかなり弱音で、その後の6小節目に浮遊感がありそれが目新しかった。かなりテンポが速めて、付いていけてないところも若干オケにあったが、懸命に指揮者についていく様子が感じ取れたし中々よかったのでは。

 
フンメル:ファゴット協奏曲 モーツァルト:ファゴット協奏曲
 予習不足であまり印象が残っていない…。ファゴットソロの音は特にウィーンフィルだから大きいということはなく普通に小さめの音だった。だが弱音がどこまでも弱音で、アタックが極限まで綺麗でコントロール能力がものすごかった。

概要

2022/5/29(日)13:15開場 14:00開演 三井住友海上しらかわホール
スーパー・ペダリストシリーズ第2回 ファゴット

指揮・ファゴット ソフィーデルヴォー Sophie Dervaux
指揮 フェリックス・デルヴォー Felix Dervaux

モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲 K492
フンメル:ファゴット協奏曲ヘ長調WoO23,S63
モーツァルト:ファゴット協奏曲変ロ長調K.191
フェリックス・デルヴォー:ファゴット協奏曲