2024年11月29日金曜日
愛知芸術文化センターコンサートホール 開場18:00 開演18:45
■Harrison Birtwistle : Donum Simoni MMXVIII
 バートウィスル:サイモンへの贈り物2018
■G.Mahler : Symphonie Nr. 7
 マーラー:交響曲第7番

s42000 A35000 B28000 C22000 D16000 E12000 学生抽選3000
文化庁支援小学生以上18歳以下無料招待アリ







日記

 筆者の場合音楽に感動するプロセスの一つとして、音楽・曲の流れや雰囲気に自分の心象風景や内面の葛藤を投影し曲と一体となることで、その曲によって自身が知らない結末へ導かれ、今まで混沌としていた私の中身に新しい秩序が出現しそれを何か超越的なものを体験しているとして感動するのだが(これはやや大げさに言っているしカントも似たようなことを言っていた気がするが兎に角)、今回のマラ7では曲に没入することができず期待していた感動にいたることができなかった。

 ラトルの指揮で、丁寧に丁寧に音楽的な演奏になるように、やや過剰ともいえる強弱の幅のあるフレージングで徹頭徹尾演奏され、オケの素晴らしい追従性と機動力を存分に堪能できたが、あまりにも解釈詰込みました感が強くわざとらしい演技を感じてしまう。愛着が健全に発達した人々が曲の性質を分析したカルテか論文を元に、軽躁・分裂的・自己愛的な性格を持つ曲を再現したのであって、もとからマラ7にシンパシーを感じていた私は、自分が健常者に分析され目の前でその物まねをされて、自分の黒歴史を分析したものを発表されているような羞恥心を感じてしまうのである。(尤も、マラ7を好きになったきっかけは構造美を見出したからであったが。)
 

・ホルンの配置
 ホルンは上手側CbとTuの間に4本。ワーグナーチューバ持ち替えのブルックナー9番ならわかるが、マラ7でなぜこの配置に? Youtubeで見るとロリン・マゼールの時代からこの配置が多いようだから、慣習的にのようだが。愛知芸術劇場コンサートホールは後方の壁の跳ね返りが比較的大きく、その恩恵を得ている愛知県のオーケストラに聞きなれていると今回のホルンセクションは響き不足に感じた。実際第5楽章では圧倒的にTrp優位であったし対旋律としてもうちょいほしかった。それに、日本では良くも悪くも1stアシスタントがついて5人の演奏であるだろうし。

 面白いのはマーラーが自作の7番について手紙の中で
「この作品はたいへんに晴れ晴れとした快活な性格のもので、編成もかなり小ぶりなので、そのうちにどこでも演奏されるようになると思います。」
前島良雄『マーラー 輝かしい日々と断ち切られた未来』アルファベータ、2011年、224pより
と述べていることである。

・第2第3楽章はやや冗長で面白くない。これは曲自体の問題でもあるのだが、演奏もほかの楽章に比べて明らかに淡白な演奏だった。第4楽章に入ったら急にテンポ操作を積極的にやりだして、それは大変良かった。

・音が短い
 全体的に音が短い気がする。無観客状態のお風呂状態を聞いて調整したのか、もともとそういう弾き方なのか。そういえばどこかのティンパニ奏者が放送局の自前楽団かデジタル録音が多いベルリンフィルに客演したとき、録音に適するように音を短くするみたいな話をどこかの記事で読んだな。もしかしたらフレーズ終わりのディミヌエンドの強さもこの辺に関係しているのかもしれない。

・観客席
 9割5分くらい埋まってた。2階サイドと3階正面の脇の方はほぼ学生招待っぽかったが、学生席はほかにも結構散らばっているようだった。近くの中学生の招待客が演奏が始まってもしゃべっているのでシーっとジェスチャーしようと思ったら近くの貴婦人が席を小突いてくれた。フライングブラボーは無かった。2秒くらいの沈黙の後自然発生的な拍手で良い雰囲気。

・弦楽器
 ヴァイオリンの音程がすごく良くて、セクションが一つに聞こえる。幅がなくてぴっちり定まっている。
 コントラバスの音量もすごいある。そういえば名フィルTu林氏が留学中にバイエルン放送響に客演した時の経験談で、あっちはCbがすごい出るのでTuは控えめで大丈夫(だからF管を多く使う、だったか?)という記事を読んだのを日記を書いている最中に思い出した。なんかこれが実感できてうれしい。やはり日本人とは体格差があり楽器の大きさなども違ってくるのだろうか。日本人のオケはCbをデフォルトで+2人とかでもいいような気がする。N響は他の国内オケより比較的大きいが……。

・金属板はチューブラーベルで代用されたがやっぱり音が軽やか。しかしオケを塗りつぶさないのは、たっぷりオケが聞けるという利点もあるか。

・トランペットは最後の第1楽章第1主題回帰が一番とびっきりの強奏で、そこまではセーブしていたみたいだ。



https://www.youtube.com/watch?v=RRScrGedbuo


 前半の現代曲は舞曲風の結構ノリやすいリズムが下地にあって、なおかつ金管と打楽器が追いかけっこのリズム隊、木管がハーモニーと結構わかりやすい構図の場所もあり初見でもかなり楽しかった。何よりトロンボーンのバリバリサウンド好きにはたまらん。最後のチューバの存在意義はいまいちわからないけど。自分がアマオケ幹部だったらこういう曲を提案するんだけどな。ストラビンスキープログラムの前半かアンコールにやったら面白いと思うんですけどいかがでしょうか。ていうか、名古屋に現代音楽ばかりやるアマオケ誰か一緒に作りませんか。自分バイオリンちょっとできるっす。指揮もやりたいです。楽譜代を捻出するのが大変そうですね。

以上