▊ バルトーク:ルーマニア舞曲 Sz.47a, BB 61
▊ バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112, BB 117
▊ クセナキス:ノモス・ガンマ 
▊ ラヴェル:ボレロ



感想

 ルーマニア舞曲はなんだかショスタコーヴィチぽかったです。ミッキーが振るとそうきこえてしまうのか…。ピッコロとVn1のユニゾンとか、行進曲っぽい舞曲であるところもショスタコを思い出しました。後年タコとバルはお互いを引用し合いますが、若いバルに既にタコに似た部分があって面白かったです。

 ヴァイオリン協奏曲はミッキーの挑発と服部さんの受け答えが面白かったです。周りの人もクスクス笑っていました。服部さんは2回目の生演奏で、1回目は去年のサマーミューザで東京フィルとのメンコンを聞いています。その時音が小さくあまり響いてないなと思ったのですが、これはミューザ川崎の4階席だったせいだと思っていましたが、今日の芸文でも似た傾向を感じたのでこの感想は間違いではなかったようです。私はニワカなので恥を恐れず語りますが、楽器と弦の相性が悪いか(張力が強すぎるか)、もしくは魂柱の長さが長すぎるのではないかと疑ってます。完全に知ったかぶりの適当な思い付きです。つまっていて、響く余裕がない感じのきいていて苦しい音なので気になりますね。

 コンチェルトのソロの出だしはG線のレチタティーヴォ風ですが、ここはかなりお転婆でじゃじゃ馬に聞こえました。具体的にいうと、メロディーラインの強弱が弓の運動性能に引っ張られて凸凹していたということです。個性的でよいとは思いますが、私はウーンとなってしまいますね。彼女の強みは、強奏や技術的高度な部分を迫力ある風に見せれる所ではなく、ppの音量を躊躇なく思いっきり落とせるところだと思っています。そういう点で見ても、今日の2,3楽章は雰囲気にのまれていたというか、音量落とせるところも流れて普通に弾いてしまっていたように見受けられました。強弱のメリハリがなくなると曲後半の客の集中力が弱まってくるので非常にまずいです。まあ今日はよくブラボーとんでいたし盛り上がっていたからどうでもいいか。カデンツァはスピード感があって、かつ無理がなくて良かったです。
 曲は、ハープが大活躍でした。冒頭から、でも最後の最後は参加しない。冒頭の低弦のpizzですが、これは後に出てくるメロディーの伏線なんですね。今日はこれに気が付けたのが嬉しかったです。
 アンコールがよかったです。思うに服部さんはクレッシェンドやデクレッシェンドがやたら直線的な気がします。だから現代曲が似合うのかも。


 さて、ノモス・ガンマですが、期待していたほど面白くなかったというのが素直な感想です。期待が大きすぎました。去年サントリーホールの現代音楽フェスで、クセナキスの『ペルセファッサ』を聞いたのですが、これが最高に面白かったのです。クラシック音楽のコンサートでこんなに楽しくて良いのかしらんと思ったほどです。このペルセファッサは6人の打楽器奏者が客を囲み演奏しましたが、この間隔が離れているのが最重要事項でした。
https://twitter.com/SuntoryHall_PR/status/1566984940792983552
今日の名フィルの配置では曲本来の魅力半減、いや10分の1くらいになっていました。でも贅沢は言えませんね。地方オケが定期公演で取り上げたというのが素晴らしいです。ただ、無理に定期でやらなくても特別公演にしてP席と2階後方は販売なしにして奏者を配置して、奏者を完全にバラバラにするのは無理だけど6群くらいに分けることは難しくないのでは?と思ってしまいますね。
 今日のノモス・ガンマの面白い打楽器の部分を抽出して作ったようなものが上記のペルセファッサです。機会があれば実演を聞くのをお勧めします。去年サントリーで聞いたもう1曲は『クラーネルグ』というバレエ音楽ですが、こちらはノイズだらけのゴミ屑が1時間鳴ってるだけなので聞かなくていいです。ただし、ノモスガンマの素材が使われているらしいです。
 チューバ・魂斗羅ファゴット大活躍。「コンマスはここにいて役に立たない」というトークが面白かったです。曲を聞いた後「建物が建つ」とも言っていましたが、私の中では今回は建ちませんでした。精進します。演奏は、全体的にトレモロの人たちが大きめだなと思いました。指揮は当然上手でした。曲と一体感あります。

 ボレロは特に違和感なく普通です。が、照明ありで奏者がライトアップされているのは面白いですね。初心者にはいいかも。というか初心者向けコンサートにブリテンの青少年のための管弦楽入門やるよりライトアップ付きボレロやったほうがいいのでは?途中に司会挟んでも、スネアが間を繋いでくれますし。
 Trbと冒頭のFlソロはちょっと音外してハラハラしました。応援してます。打楽器は増強されていたらしいです。

 今日の奏者の男性陣の衣装は黒いシャツでした。クールビズなのか、狭い配置のため燕尾だと尻尾がひっかかるからか。後者でしょうね。ミッキーは前半は赤いタイに上下黒のジャケットとパンツ。ノモス・ガンマは黄土色の衣装、ボレロは赤い色違いの衣装でした。
 こういうの公式が作って。あと、最後立った意味わからなかったけどそういうことだったのか!
 公式ツイートで、当日券が完売して買えない人がでたと見ました。開演5分前に入場したのですが、その時にまだ大勢並んでいたので開演時間遅れるなと思ったのですがそこまでとは。しかし今日は結構席開いていました。100席くらいは空いていたのではないでしょうか。定期会員の欠席以上に空いていそうです。なんにせよせっかく来てくれたのに勿体ないですね。以上。



概要

第512回定期演奏会〈継承されざる個性〉
2023.5.12 (金) 18:45 / 13 (土) 16:00
愛知県芸術劇場コンサートホール
出演
井上道義(指揮)
服部百音(ヴァイオリン)*
プログラム
▊ バルトーク:ルーマニア舞曲 Sz.47a, BB 61
▊ バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112, BB 117*
▊ クセナキス:ノモス・ガンマ
▊ ラヴェル:ボレロ

料金
S席:¥6,400
A席:¥5,200 
B席:¥4,200
C席:¥3,200
D席:¥2,200
Y席:¥1,000(25歳以下対象・当日券のみ)

※「新型コロナウイルス感染症対策とお客様へのお願い」をご確認の上、ご購入ください。
2024年末での引退を発表している鬼才 井上道義。「継承」が通季テーマなのに、誰も継承できない唯一無二の個性を発揮したプログラムを組みます。井上をリスペクトする服部百音とのバルトーク、スコア指定通りに円形配置で演奏するクセナキス、そしてそのままの配置での「ボレロ」。コンサートが歴史的事件となります!